第24章 episode 18【ゼノ】〜出会い〜
アルバートに通された広間に、その男は静かに腰を下ろしていた。
シュタインの象徴の様な漆黒の軍服に全身を包んだ恐ろしいほどに美しい黒髪の男は、片目が眼帯で隠れていた。
しかし、隻眼であるはずの漆黒の瞳は静かに光を湛えながらも、鋭く真っ直ぐにこちらを見据えている。
ルリーはその隻眼を一目見た瞬間、その男の圧倒的な存在感に、身動きひとつ取れなくなってしまった。
「遠いところをよく来てくれた、プリンセス」
静かに口を開いたその男こそ、シュタインの国王ゼノだった。
「こ、この度は、お招き頂きありがとうございます」
ルリーは、なんとか言葉を絞り出すことができたが、今まで感じたことのない威圧感に、それ以上何も考えることが出来ない。
すると、ゼノが口を開いた。
「そんなに気を遣うことはない。この滞在中、城の中を自由に歩いて構わない。」
ゼノのいきなりの申し出に、ルリーはハッとゼノを見た。
「アル、プリンセスに不自由のない様に頼む」
そう告げられたアルバートは、わかりました、と単調に応えた。
「では、申し訳ないが、私はこれで失礼する」
そう告げると、ゼノはその場を後にした。