第16章 雄英文化祭編
その様子に、耳郎がふっと笑った。
「いいじゃん!せっかく来てくれたんだし、楽しんでもらわないとね」
「そうそう!行ってらっしゃーい!」
上鳴も、にこにこと手を振る。
「エリちゃん、楽しんできてね!」
芦戸が笑顔で声をかけると、八百万も上品に微笑んだ。
「練習はいったん休憩して、手を休めてからにしましょう。おもちさん、どうぞお気になさらず」
「うんうん!小さい子と一緒にお散歩とか、いいじゃん!」
葉隠の声も飛んでくる。
「エリちゃん、おもちさんを独り占めできてよかったね!」
その言葉に、エリは少しだけ恥ずかしそうに俯いた。
けれど、おもちの手は離さない。
「……うん」
小さく答えた声が、あまりにも素直で。
「可愛い……」
芦戸が思わず呟き、耳郎も頬を緩めた。
「おもち、すっかりお姉さんだね」
「ふふ、そうかな?」
おもちは、いつもの穏やかな笑みを浮かべた。
しかし、その様子を少し離れた場所から見ていた爆豪は、黙って二人を眺めていた。
エリが彼女に懐いていること自体は、別に構わない。
むしろ、彼女が誰かに頼られ、慕われている姿を見るのは嫌いではなかった。
ただ。
あの小さな手が、ずっと彼女の手を握っている。
そして彼女もまた、エリの手を優しく握り返している。
その表情は、いつもの余裕ある笑みとは少し違っていた。
まるで、本当に大切なものを守るような顔。
爆豪は、スティックを握る指にわずかに力を込めた。
「……チッ」
「ん?爆豪、どうした?」
上鳴が振り返る。
「何でもねぇ」
「えー?もしかして、おもちがいなくなるの寂しいとか?」
「ぶっ殺すぞ、クソ電気」
「図星かよ!?」
「違ぇっつってんだろうが!!」
いつもの調子で怒鳴りかけた爆豪だったが、エリがこちらを振り向いたため、すぐに口を閉じた。
その視線の先で、おもちが小さく頭を下げていた。
「じゃあ、少しだけ行ってくるね」
「行ってらっしゃーい!」
クラスメイトたちの声に見送られ、彼女はエリと手をつないで歩き出した。
エリは、彼女の隣を歩きながら、何度も顔を見上げている。