第9章 禪院直哉
【誕生日】
「おい、誕生日の贈りもんは?」
顔を合わせるなり、直哉は偉そうに手を差し出した。
「はい。お誕生日おめでとう」
ロロが渡したのは、金糸で繊細な模様が刺繍された、上質な羽織紐だった。直哉の着物に似合うよう、色も柄も何日も悩んで選んだものだ。
「…へえ。俺の着物に合わせたん?」
「うん。直哉に似合うと思って」
直哉は羽織紐を指先でつまみ、満足そうに口元を緩めた。
「見る目あるやん。さすが俺の女やな」
「もう、素直に喜んでよ」
「喜んどるやろ。これ以上、何を望むん?」
当然のような顔で言い切る直哉に、ロロは呆れてため息をついた。
「せっかく一生懸命選んだのに…」
「なんや、不満なん?」
直哉はロロの腰を引き寄せ、顔を覗き込んだ。
「俺に贈りもんできるだけでも光栄やろ。もっと誇りに思い」
「直哉って本当に傲慢!」
「今さら気づいたん?」
直哉は楽しそうに笑うと、贈られた羽織紐を大切そうに懐へしまった。
「なあ、これ着けるとこ見たいんやろ?」
「え?」
「せやから、こっち来い言うてんねん」
ロロに羽織紐を結ばせると、直哉は鏡の前で満足げに笑った。
「ほら、よう似合うやろ?」
「うん。すごく素敵」
「当たり前や。俺が着て似合わんもんなんかあらへん」
そう言って振り返った直哉は、ロロの手を取った。
「ほんで、もう1個プレゼント」
「まだ欲しいの?」
「俺の誕生日やで?欲しいもんくらい遠慮せんわ」
直哉はロロの額に口づけた。
「今日一日、俺の隣におり。ほかのことなんかせんでええ。俺だけ見とき」
「いつも隣にいるよ?」
「足らへんねん」
直哉はロロの指を絡め取る。
「来年も、その次も、ずっとや。俺の誕生日を祝うんはロロの役目やからな」
「…約束する」
「約束やない。決定事項や」
傲慢に笑う直哉。けれど、ロロの手を握る指先は、離すまいとするように優しかった。
「…ほんま、好きやで」
「もう一回言って?」
「調子乗んなや」
頬を赤くした直哉は、ロロを抱き寄せる。
「一回聞けただけで満足しい。俺の愛情は安売りせえへんねん」
そう言いながら、直哉はロロの髪にそっと頬を寄せた。