第7章 狗巻棘
【誕生日】
「狗巻先輩、お誕生日おめでとうございます!」
放課後、ロロは小さな包みを差し出した。狗巻は嬉しそうに受け取りと、丁寧に包みを開く。中に入っていたのは、鮭の模様が刺繍された手作りの巾着袋だった。
「お菓子を持ち歩くときに使ってください!」
「しゃけ!」
狗巻は嬉しそうに頷くと、さっそくポケットに入っていたお菓子を巾着袋に移し始めた。
「えっ、今使ってくれるんですか?」
「しゃけしゃけ!」
その様子があまりにも嬉しそうで、ロロは思わず笑ってしまう。
「よかった。手作りって迷惑じゃないかなって、ちょっと心配だったんです」
すると狗巻は、巾着袋を大切そうに握り、ふるふると首を横に振った。
「おかか」
そして、ロロの頭をぽんぽんと撫でる。
「…先輩?」
狗巻は少し考えたあと、ロロの手を引いて隣に座らせた。
「しゃけ?」
「えっと、まだ何かありますか?」
こくん、と頷く。狗巻は巾着袋から1つお菓子を選ぶと、ロロの手のひらに載せた。
「私にもくれるんですか?」
「しゃけ!」
「ふふっ、ありがとうございます」
2人でお菓子を食べていると、狗巻がふいにロロの肩へこつんと頭を預けた。
「えっ、狗巻先輩!?」
「おかか…」
照れたように目を伏せる狗巻。いつもは後輩のロロをからかうこともあるのに、今日は妙に甘えてくる。
「先輩、もしかして誕生日だから甘えたいんですか?」
「しゃけ!」
勢いよく頷いた狗巻に、ロロはくすくす笑った。
「じゃあ、今日はいっぱい甘えてくださいね」
狗巻は顔を赤くしながら、ロロの袖をきゅっとつまむ。そして、帰る時間になっても、なかなか手を離してくれなかった。ロロが贈った小さな巾着袋は、その日から狗巻のお気に入りになった。使うたびに、今日一緒に過ごした時間を思い出せるから。そして翌日も、その翌日も。狗巻はロロを見つけると、巾着袋を得意げに掲げてみせるのだった。