第3章 〈過去編〉奇妙な先輩
「!!」
目の前に気を取られ過ぎて、背後が疎かになっていた。
振り解こうともがいても、強く肩を組まれて全くビクともしない。
(やばいッ…!やられ………)
?
物凄い力で押さえつけられているけど、痛くないし、殺気も感じない。
すると後ろから、私の耳元でボソッと呟いた。
「安心しな。てめぇの肩持ってやる」
「!」
いや、確かに持ってるけど。
不審に思いながら見上げると、まさしく私の肩を持っているその人と目が合う。
やっぱり、見たこともない顔だった。
「おいおいダメじゃねぇか?外で待ってろって言ったろ?」
(いやだからどちら様ですか?)
私の反応などお構いなしに話をどんどん進めていく。
目の前の強面の上級生にさ全く興味を示さず、初対面のはずの私にばかり話しかけてくる。
「ああ?1年か?そのガキの知り合いか?」
するとようやく、私から目を逸らして上級生に悪い笑みと睨みを効かす。
「人の女、勝手にちょっかい出されて黙ってる男なんていねぇだろ?」
『!』
「!」
え、え……?
私は驚きのあまり4度見くらいした。
勝手に彼氏面されたからではない。
ジャージ姿にも関わらず、女だと見破られたのは初めてだったから。
「は?何言ってんだ?ソイツが…………は?」
「いやいや見りゃあ分かるだろ。女1人相手に男4人って、ハードプレイにも程があるだろ」
周りの注目が一気に私に向けられた。
「………男だと、言った覚えは…ないですけど」
『……』
バツが悪そうに告白する私と妙な沈黙ができてしまうギャラリー。
グイッ
「!」
私はさらに引き寄せられて、大きな腕の中に抱えられるようにして守られる体勢になる。
(え……ちょッ…)
「ま、つーわけで、これ以上こいつにちょっかい出すの……やめてもらえますか?先輩」
ゴワァッ
『!!』
太い声色やようやく醸し出される殺意を前にして、その場にいる誰もが理解した。
このままだと、とんでもない奴を敵に回すと。
(この人、一体……)
守られている側の当の本人は、未だに状況を掴めず固まったままでいた。
すると相手の1人が、思い出したように声を上げる。
「あ!コイツ、最近噂の棪堂じゃねえか?」
棪堂…?
この時ようやく零は、棪堂の名前を知った。