• テキストサイズ

約束の行方【御幸一也】長編

第7章 約束の結末


御幸はマスクを着けて座る。
ベンチからもスタンドからも飛び交っていた声援が止む。

吸い込まれそうな空気の中、ラストイニングが始まった。

「――ストライク!」

一つ、また一つとアウトが増えていく。

降谷くんも生き生きとしたいい球を投げてる。

けれど、私の目線は御幸から離れない。

マスクの内側でもずっと笑顔。

こんなに楽しそうに野球をやってる御幸を見たのはいつぶりだろう……

再会してからの日々が走馬灯のように駆け寄る。

教室でスコアとにらめっこしてる御幸、
沢村くんとマウンドで少し悪い顔する御幸、

キャプテンになってからは考え込む様子が増えてた。

けど――

御幸がキャプテンになったからこそ
ここまで来れたんだよ。

「――スリーアウト!!」

球審の声が響いた瞬間――

「うぉおおお!!」

言葉にならない声が球場中に響き渡る。

ベンチから選手達がマウンドに飛び出していく。

その中心で、
御幸はゆっくり空を見上げた。

まるで張り詰めていた糸が切れたかのように。

――ガクッ

御幸の体が大きく揺れた。

「御幸!!」

倉持くん達が慌てて駆け寄る。

その姿にスタンドも相手ベンチも一気にザワついた。

けれど、
御幸は最後まで笑っていた。

不意に目線が合う。
すると――

「ユキ!」

グラウンドから名前を呼ばれた。

倉持くんに支えられてる体。
掠れた声。

限界突破にも程があるでしょ……

「ば一也!」

私も叫び返した。

その声に周囲が一瞬静かになる。

次の瞬間――

「ぷはっ!」
「前原、お前今それ言うとか、最高かよ!!」

倉持くん達が吹き出した。

相手ベンチやスタンドまで
笑いが零れる。

その中心で
御幸も肩を揺らして笑っていた。

「くっ……はっはっは――っ!いってぇ……」
「ほら、とっとと歩け、病院行くぞ」

御幸は痛がりながらも、笑顔のまま
倉持くんとゾノくんに支えられてグラウンドを後にした。


/ 88ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp