第25章 水子供養
【水子供養】
A子とB子は大学生のときからの親友で、二人とも旅が好きだった。なので、大学で友だちになって以来ずっと、年に数回は綿密な旅行計画を立て、二人で出かけていた。
しかし、そんな二人もすでに28歳。本来なら、女性同士ではなく、彼氏とでも旅行に行っていい年なのだが、女同士の気安さから相変わらずの女二人旅を楽しんでいた。
今回は、S県の温泉宿に来ていた。レンタカーを借りて、周囲を観光したり、ちょっと足を伸ばして日帰りスキーをしたりして楽しんでいた。その日は今回の旅程の最後の日であり、山道をドライブしていた。
このとき、ふとA子が道端に鄙びた寺を見つけた。A子は大学でも日本文化と日本史を専攻しており、こういった日本古来の建造物に興味があり、寄っていこうと主張する。特に名のある寺というわけでもなく、正直B子は興味はなかったが、A子が強硬に行こうと言うのでついていくことにした。
道路から急峻に立ち上がる山道を抜けると、森に囲まれた古いお堂が見えてきた。お堂の周囲には小さな地蔵がたくさんあった。お堂の名称は寺額がもうかすれていて読めなかったが、寺の周囲に掲げられた上りには、かろうじて「水子供養」とあるのが読み取れた。
「ここ、水子供養のお堂なんだね」
A子はしげしげと眺める。
「水子って、子供のうちに死んじゃったっていうやつ?」
B子は少し肩をすくめる。供養という言葉から、ちょっと怖いことを想像したようだ。B子はあまりこういった雰囲気は好きじゃない。
「そうね、水子っていうのは、生まれて間もない、もしくは生まれる前の子供のこと。こういう水子の供養堂は、そういう小さいうちに亡くなってしまった子供を供養するの。お地蔵様、正式には地蔵菩薩はそういう子供を極楽に導くと言われているのよ」
A子は説明しながら、お堂に手を合わせる。B子も恐る恐る手を合わせた。
「ねえ、もう行きましょう。ちょっと怖いわ」
言いながら、B子はすでに参道に向かおうとしていた。よほどいやだったらしい。
「うん、わかった。」
A子はお堂を振り返る。まだ、この世に産まれ落ちる前に死んでしまった子どもたち、
本当は楽しいことがいっぱいあったのに・・・
そう思うと、
「可哀想・・・」
ポツリとA子はつぶやいた。