後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第5章 琳 後編
桃児の広げた衣の裾が、少しだけほつれていた。
桶の中がささくれていて、衣が引っかかったのだ。
様子を見に来ていた監督女官がすっ飛んでくる。
青くなって、呆然と衣を掲げる桃児と、衣のほつれを交互に見て、監督女官の顔も青くなる。
「青龍妃様の衣が…」
「も…申し訳ございません…わたし…」
桃児はみるみる青い顔から白い顔に変化し、目に涙を溜める。
「あんた…とんでもないことをしてくれたね…覚悟しな!」
監督女官が、棒を桃児の頭目掛けて思いっきり振りかぶった。
「待ってください!」
私は桃児を庇うように両手を広げ、監督女官と桃児の間に割って入った
「何すんだい!?あんたも頭かち割られたいのかい!?」
怒り狂う監督女官に私の声は高ぶった。
「今彼女を殴ったら、血が飛び、衣は取り返しのつかないことになります。そうしたら、あなたもタダじゃ済ませんよ!」
私の言葉に棒を振り上げた監督女官は、ハッとなって、棒を取り落とす。
私は桃児から衣を取って、ほつれた所を慎重に見た。
ささくれが小さかったのか、幸い1本細い糸が出た程度で、大したことは無い。
私は自分の前掛けをま探った。
あった!
多分桶のささくれや何らかの事故で衣がほつれたり、衣装に傷が着くのはこの職場ではありうることだ。下女達は自分の身を守るため、対策用に針と糸は常備してるはず。
私は針を1本だし、青龍妃の衣のほつれに慎重に糸を通して、衣を縫った。
縫い目をそっと触る。
大丈夫!平坦だ。
私は修復した衣を監督女官に見せた。
「衣はこれで大丈夫です。
見てください。縫い目も目立たず、表面も凹凸がありません。」
棒を取り落とし、監督女官が修復部分をまじまじと見つめた。
「今回の件は桶のささくれが原因です。この件で桃児を断罪したら、設備点検不行き届きで、あなたも洗濯場全員罰せられますよ!?いいんですか?」
私が挑む様に監督女官を見上げた。
桃児は震え泣きながら私たちのやり取りを見守っている。
私の言葉を聞いて、納得したのか監督女官が顔をあげる。
「これなら黙ってればどうにかなりそうだね…」
こちとらスーツの綻び繕って10数年だぞ!舐めんな!
と心で思いながら、監督女官を更に詰める様に見つめ