禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第8章 口下手な彼は彼女と暮らしたい 【鬼滅の刃 冨岡義勇】
「冨岡さん、またですか?」
しのぶの呆れたような声が、蝶屋敷の玄関に響いた。
そこには、どこからどう見ても「かすり傷」とさえ呼べないような、指先の小さな擦り傷を差し出した義勇が立っていた。
「……怪我だ。手当てが必要だ」
「それ、放っておいても屋敷の門をくぐる頃には治っているレベルですよ。……まあいいです、いのりさーん! また『お得意様』がお見えですよ!」
しのぶが奥に向かって声をかけると、パタパタと忙しない足音と共にいのりが顔を出した。
「冨岡さん! お帰りなさい。またお怪我をされたんですか?」
「……ああ。大したことはないが」
「ダメですよ、菌が入ったら大変です。さあ、こちらへ!」
いのりに手を引かれ、義勇は吸い込まれるように診察室へ消えていく。
その後ろ姿を見送りながら、しのぶは意地悪く口角を上げた。
診察室では、いのりが丁寧に義勇の指先に軟膏を塗っていた。
終わった後、義勇が懐から取り出したのは、丁寧に紙で包まれた色鮮やかな髪紐だった。
「これは?」
「……道中で見つけた。お前にやる」
「えっ、でも……昨日も飴をいただきましたし、一昨日も……」
「……他の奴らも、お前に何か渡していただろう」
義勇は視線を逸らしながらボソリと付け加えた。
最近、若い隊士たちがいのりに花や菓子をこぞって貢いでいるのを、鋭い視力でじっと見つめていたのだ。
「ふふ、ありがとうございます。大切にしますね、冨岡さん」
いのりが嬉しそうに微笑むと、義勇は満足げに、しかし相変わらずの無表情で頷くのだった。
手当て(という名の逢瀬)を終えて廊下に出ると、そこには腕を組んだしのぶが待ち構えていた。