第68章 口づけ
不意に咲希が耳元に口を近づけてきて囁いたものだから私は咄嗟に耳を押さえて顔をそむけた。その拍子に、咲希は自身の柔らかな唇を私のそれに押し付けてきた。
・・・・っ!?
甘い吐息が口の中に流れ込む感覚
ふわりとした温かい感触
唾液で濡れた唇の味
見開いた私の目の前で、咲希の長いまつげが震えていた。
呆然としている私の手に咲希がぎゅっとメモ用紙を握らせてくる。
「ま・・・待て、常盤!」
ガタンと立ち上がったが、私が二の句を継ぐ前に、咲希はさっさと準備室を出てしまった。
去り際、パチン、とウィンクをひとつ。
「モルフェで買えるのはね、エッチな夢なんだよ?夢ならいいでしょ?ね?センセ♪」
がららっと扉が閉まる。準備室で私は、モルフェの住所と思しき番地が書かれたメモを握りしめ、ただ立ち尽くすことしかできなかった。