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淫夢売ります

第48章   心の鎖


ただ、こういう考え方が今どき流行らないのも十分承知だ。柴田たちのように二次会まで付き合えばいい方で、下手すると飲み会自体に参加しないやつもいる。なんとなればそっちのほうが多い。プライベートの時間を大事に、というのが今の風潮だ。

きっと、そんな奴らからしたら、酔ってくだを巻く50絡みのおじさん課長の面倒を見るなんてまっぴらごめん、ということなのだろう。自分でも貧乏くじを引いているという自覚はある。せめて、柴田たちみたいに、二次会終わったくらいで早々にすっと消えるのが正解だろう。

「な?だからな・・・男ってのはさ、ガマンなわけよ。色々耐えて耐えてさ、それでも報われないことある・・・その覚悟の上でだなあ」

何やかや言いながら、課長はハイボール片手に突っ伏してしまう。

これ、しばらく寝たら起きるんかな?
家まで送るべきだろうか?

見ると、だいぶ疲れたような顔をしている。喋ってるときはイキイキしているけど、こうして眠っている時の顔だけ見ると、やっぱり頬は垂れ、皮膚はガサガサ、よく見れば目の下にもクマがある。相当、無理をしている、という感じだ。

ああ・・・我慢して、我慢して、出世して、それで一生懸命成果上げても、部下は遠巻きに見てて。
それで、奥さんには逃げられて、こんなボロボロになるまで働いて。
ちょっとした愚痴を言う相手も、多分いなくて。

でも、それって、課長だけじゃなくて、自分もかなと思う。
烏龍茶を流し込む。ほろ苦い独特の風味。

僕らの世代は追い立てられてばかりだ。
自己啓発、セルフブランディング、タイムパフォーマンス・・・

時間を無駄にせず、能力を高めて、人より抜きん出たところを作って、自分の市場価値を高めて、そうじゃないとあっという間にAIに仕事奪われてお払い箱。

待っているのは暗い地獄のような未来絵図。
人のことなんか構っていられない。冒険なんかできない。
自分をどう守るか、自分の生活をどう穏便に進めていくか、それしか考えられないし、考えるゆとりがない。

その行く末は、もしかしたら、結局はこんな感じなのかもしれない。
寝ている課長を見て、そんなふうに思ったりした。
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