第69章 三人成虎(さんにんせいこ)
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【三人成虎】噓であっても、多くの人の話題になれば、みんながそれを信じてしまい、真実のようになってしまうということ。
トラが来たぞー!と三人の人が言ったらびっくりして逃げちゃうよね!?みたいな。
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「ご苦労さんやったな、瀬良ちゃん」
土御門様がラップトップのパソコンを閉じて、ぐっと伸びをする。時刻は22時35分。まだギリギリ電車がある時間だ。
土御門様と私は、例の疱瘡神の事件の事後処理のため、2週間ほど京都で仕事をせざるを得なかった。そして、その後、東京にある陰陽寮の本庁舎に戻ってきてからも、1週間ほどはこうして一緒に報告書やら事務書類やらの作成に追われ続けていた。私は事務作業ばかりだったが、土御門様は案の定、陰陽頭(おんみょうのかみ)から呼び出されて、事案の説明を直接求められたし、宮内庁の上級官僚に対する『説明』という名の謝罪周りを余儀なくされていた。
もちろん、その全てに私は同行するのだが、一緒に付き添っていた私の方が胸が痛くなるほど、周囲からの責められようはきついものだった。
だが、幸いなことに、私を始めとした当日現地に派遣されていた多くの陰陽師達の報告書や土御門様自身の誠実な受け答えが奏功したのか、いわゆる身分に傷がつくような処分を受けるような事態には発展せずに済んだ。最終的に今回の事案について、土御門様に下されたのは、陰陽寮当主であり土御門様のお父上でもある陰陽頭からの『口頭厳重注意』という処分であった。
実際に土御門様が陰陽頭から処分を言い渡される場に、私は立ち会うことは出来なかったが、陰陽頭の執務室から出てきた彼を迎えることはできた。その神妙な面持ちからは、日本の霊的守護という重責を担うという覚悟がにじみ出ているのがよくわかった。
『口頭注意やったわ』
そう言った土御門様。
この結果を聞き、私は憤慨した。そもそも土御門様が処分を受けること自体、納得がいかない。私達はあの時、あの場で最良の決断をしたし、実際に疱瘡神は暴走することなく、被害を最小限に食い止めることには成功したはず。なのに、なぜ・・・という気持ちが湧き上がってきて仕方がなかった。しかし、当の土御門様は、『神宝奪われ、敵の正体もなんもわからん。こんな体たらくや。実際に起こした失態に比べたら軽すぎる処罰や』と言って笑っていた。
