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天狐あやかし秘譚

第66章 和顔愛語(わがんあいご)


ズバン!ズバン!と小気味よく佐々木選手の投球がキャッチャーミットに吸い込まれていく。その度に貧乏神は立ち上がりメガホンを振り上げ、興奮するものだからたまらない。瞬く間に3人のバッターを三振に切ってくれたから良かったようなものの、この時点で私は肩で息をし、げっそりし始めていた。

まだ、体の中の熱は十分量あるとはいえ、不安しかない幕開けである。

そして、2回表、ドジャーズ一人目の打者がフォアボールで出塁すると、次の打者がツーベースヒットを放つ。推しチームのチャンスにまたしても貧乏神のテンションが爆上がりする。

『ええぞおお!!!いけええ!!!』
立ち上がり、渾身の力で応援する貧乏神。その上がったテンションによる貧乏パワーを必死に押さえつける私。

・・・く・・・苦しいぃ!

そして、三人目のバッターが捕手のエラーと犠牲フライでもう2点を追加。興奮のあまり、貧乏神が小躍りしてハッスルする。

『うぉおお!儂ゃうれしいぞおお!!!』

貧乏神の滂沱の涙。かたや私は必死になって御札を両の手で握りしめ、貧乏神による妖力の搾取に耐え続ける。

ここまででさすがの貧乏神も興奮疲れしたのか、2回裏ではだいぶ大人しくしていてくれた。まあ、さほどの見せ場もなく、佐々木朗希選手には先ほど死ぬほどアピールしたからもういいのだろうけど・・・。

そして、3回表である。大谷の二回目の出場に、貧乏神のテンションが再び上昇する。

『今度こそ・・・今度こそじゃああ!!いっぱつかますのじゃ!大谷ぃぃぃいいい!』

ところが貧乏神の熱烈な応援の甲斐なく(というか、応援があったからこそか?)大谷はあえなくファーストゴロに打ち取られてしまう。一瞬テンションが下がったものの、その次の打者がホームランを打って更に1点を追加したことで、貧乏神は狂喜乱舞。

も、もう・・・やめてぇ・・・!

この一瞬でだいぶ妖力が吸い取られた。そして、ここでついに恐れていたことが起こってしまう。

多分私の集中力も切れてきたのだと思う。3回裏、貧乏神のパワーが火を噴き出した。佐々木選手の投球が乱れ始めたのである。二連続のフォアボールで出塁を許し、ついに1アウト満塁のピンチを迎える。

まずい・・・もう・・・力が・・・。
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