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天狐あやかし秘譚

第62章 堅忍不撓(けんにんふとう)


「大丈夫です・・・」
「私はあなたのこと、気に入っているのですが・・・」
「結構です」
「こんなに麗しい女子からお誘いしているというのに!」
「私の気持ちも聞いてほしいですね・・・」
「失恋の痛みは別の恋で・・・というのが定石なのです」
「あなたは範疇外です」
「まあ・・・!なんという失礼な!
 ヤッてみたら案外いいものかもしれませんよ・・・。
 私、これでも、名器なんですよ?」

ゲイからバイになる人もいますしね、と冗談とも本気ともつかない事を言う。
不器用な慰め方。それとも本気なのか?

まあ、直属ではないとしても、上司ですからね。
立ててあげなくてはいけない。
それに、今日、ひとりの真っ暗な家に帰るのは、たしかに辛いかもしれない。

「まあ、範疇外ですが、ここで朝まで飲むってのなら、付き合ってもいいですよ」
「付き合ってあげてるのは私の方なのです!」

わざとらしく、ムスッとして見せる。
範疇外だけど、その顔が少し可愛らしく感じられる。

明日、仕事だけど・・・まあ、いいか。
そう思いながらも、私としては珍しく、今夜は、この不器用で優しい、少し風変わりな上司に甘えてみることにした。
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