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天狐あやかし秘譚

第58章 月下氷人(げっかひょうじん)


つまり、あの程度なら、なんとか自分たちの攻撃で倒せる、と見越した上で攻撃を放っていた。

しかし、実際は違ったのだ。あの時点では疱瘡神は、その力を全て発揮していなかったのである。なぜなら、真白の人間としての意識がまだ残っており、そのせいで、疱瘡神は完全覚醒していない状態だったのだ。

『危なかったで・・・。もしかしたら、わいらの攻撃が、かろうじて残っていた真白の部分を吹き飛ばしてしまって、結果的に疱瘡神を完全覚醒させてしまったかもしれへん。そしたら、潜在した全ての疱瘡神の力が一気に解放されてもうたかもしれん。そうなったら、わいと天狐はんの攻撃で、本当に倒せたか、わからんところやった』

もしかしたら、疱瘡神のフルパワーをダリと土御門の力が越えて、そのまま倒せたかもしれない。しかし、倒せなかったかもしれないのだ。

そして、倒せなければ、あの時点での土御門とダリの残りの呪力・妖力では、その後の攻撃で倒すどころか、封印すら出来なかっただろうというのだ。それは最悪の結末だ。私達は全滅し、リミッターが外れた疱瘡神の力が壊れた結界から漏れ出して、その影響で起きたパンデミックで日本壊滅・・・という筋書きも有り得たのだ。

では逆に、疱瘡神が覚醒していないことに気付いていたとしよう。

『仮に気づいとったら、様子見したり、あれこれ封印を試そうとするやろうな。でも、そんなことしよったら、颯馬を守ろうとする真白との間で戦況はますます膠着してまう。そして、時間が経てば、今度は颯馬が死ぬ。そうなったらアウト。眼の前で颯馬が死ねば、きっと真白の意識も死んでもうたやろな』

真白の意識が死ねば、以下同文・・・、やっぱり日本は壊滅、というわけだ。

結局、私が無謀に突っ込んだことが全ての転換点だった、と土御門は言うのだ。

「まあ、そうなのかもしれないですけど・・・」

ごにょごにょ・・・。私としては単に『真白さんと颯馬さんを助けたい』という、自分のわがままで勝手に突っ込んでいって、勝手に病気になり、ダリや土御門の足を引っ張った・・・という認識しかないのである。

おまけにダリにはものすごく心配をかけてしまった。

今も、無言でおちょこを傾けている。もちろん、不機嫌そう、とかそういうことはないのだが、なんとなくパッとしない表情をしている。
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