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天狐あやかし秘譚

第55章 奸佞邪智(かんねいじゃち)


☆☆☆
空間が縦に裂け、そこからシラクモを背負った緋紅が姿を現した。

「「おかえりなさいませ。お館様」」
古鏡を手にした二人の巫女姿の女性が同時に言った。
緋紅は無造作にシラクモを床に転がすと、座椅子に腰を下ろす。

「ああ、ただいま。キヌギヌ、スクセ」

スクセと呼ばれた女性が持つ白い鏡からは、まるで映写機のようにとある情景を映し出している。遠くの情景を映し出すことができる神宝『沖津鏡』(おきつかがみ)の力だ。
もちろん、そこに映し出されている情景は、先程まで緋紅がいた場所、中類村北部の山中であり、今まさにダリ、土御門、瀬良、綾音が疱瘡神と化した真白と交戦している場所であった。

「お館様・・・?なぜ帰ってらしたのですか?
 お館様の八握剣なら、あの場の者、全て斬り伏せることが出来たでしょうに」

キヌギヌとスクセと呼ばれた二人の巫女は、一卵性双子なのか、外見上は同じ姿をしている。年の頃はまだ20そこそこといったところだろうか。まだあどけなさの残る顔立ちをしていた。ただ、持っている鏡の色が違うことで区別できる。

白い沖津鏡を持つスクセ
黒い辺津鏡を持つキヌギヌ

今の発言は辺津鏡(へつかがみ)の巫女、キヌギヌのものであった。

「そうだね・・・でもね、あれでいいんだよ。
 僕は種を蒔いたんだよ。
 あの疱瘡神はイタツキを愛している。
 イタツキもあの疱瘡神を愛している。
 どうなるかな・・・これから・・・楽しみだねぇ」

緋紅が薄暗い和室の中、肘掛けにもたれて、ニヤリと笑った。
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