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天狐あやかし秘譚

第44章 真実一路(しんじついちろ)


「ある医者がいた。そいつには親友がいる。そして、親友は市に至る病を得た。
 その医者はもちろん親友の治療にあたった。
 だが、しかし!なんという悲劇か、その親友は治療の甲斐なく死んでしまったのだ!
 医者は己の無力を嘆いた。嘆いて、悔いて、とても不幸になった。
 そして、一方、死んだ親友は黄泉の国で嘆き苦しんでいた。
 死んだことを嘆いていた?いや違う・・・自分が助けられてやれなかったことを悔いたのだ。自分が死んだせいで、友である医師が不幸になったことを悔いたのだ。
 だから親友は黄泉の国で嘆き続けている。」

ばっと女が手を開いた。その様子はまるでスポットライトを当てられた俳優さながらだった。

「さあ、質問だ!この2人が共に幸福になるにはどうしたらよいか?」

一体・・・何?どういうこと?この質問の答えで環が・・・?
私は混乱した。こんなのまるでお芝居のシナリオのよう。
でも、今、まさに不思議なことが起こっているのは間違いなく、もしかしたら、本当に環が地獄に落ちてしまうかもしれない。

そんな・・・そんな・・・
どういうこと?どうしたらいい?
 
2人が共に、幸福に・・・って。
医者は助けられなかった。実際に親友は死んだ。
親友は助けられてやれなかった。病で死んでしまった。
結果はもう出ている。どうにかできることではない・・・。

「さあ!さあ!答えられねば・・・もう、月が登りきるぞ!」

無茶だ。無理だ・・・。
結果は変わらない・・・。これじゃあ誰も救われない。

「はっはっは!所詮は人間、運命には逆らえない」

女は天を仰いで哄笑する。

無理だ・・・分からない。運命・・・これが運命だというの?
私は環を死なせてしまって、その上、環を地獄に落とす・・・そんな、ひどい・・・。

「答えが・・・出ないよだな。まあ、諦めることだ。人には人の器がある」

じゃらりと鎖を鳴らす。怯えたような目で女を見る環・・・。
運命、諦め、人の器・・・。

ぐいと鎖を引き立てる。環がぎゅっと目をつぶった。

「・・・運命」
口から言葉が漏れた。
「あん?・・・なんだ?答えるのか?」
女が一瞬興味をそそられたかのようにこっちを見る。

「運命・・・。医者が・・・自分が万能ではないことを知って、運命を受け入れる。
 受け入れて・・・親友の死を・・・悼む・・・」
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