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天狐あやかし秘譚

第20章 往事茫茫(おうじぼうぼう)


☆☆☆
ダリを助けるにしても、まずは周辺の住民の避難が優先だということだ。
そのためには、まず、結界内に残っている女怪を祓い、その後、結界を解き、住民を避難させる、というステップを踏む必要がある。

土御門の話によると、今、女怪が発生している区域の結界を担っているのは、祭部衆の大鹿島という人らしい。その人が張った約3キロ四方の結界の中に、女怪は未だ数万という単位でひしめいているとのことだ。

ダリが女怪発生の源である、中枢にいる『始まりの女怪』を抑えているので、これ以上殖えることはないが、その掃討には現在集められる祓衆の総力をあげてもおそらく6時間位はかかるだろうということだ。

「夜通し祓って、やっと終わるかどうか、っちゅうくらいや」
というのが土御門の見解だった。

その後、やっと大鹿島の張る結界を解くことができる。結界を解けば、付近の住民の避難を実施できる。避難のための口実は『不発弾が発見された』ということにするらしい。こうして3キロ四方の住民を避難させるのにおそらく明日の昼過ぎまでかかるだろうと目算されていた。

「わいはこれから陰陽頭(おんみょうのかみ)の所に行ってくる。警察、自衛隊にも協力要請せなあかん。綾音はん達は、狭いけど、ここで休んどって。なんか困ったら瀬良ちゃんに言うて」

こう言い残して土御門が去っていった。瀬良とすれ違いざまアイコンタクトしていた。瀬良も心得ているのか、何も言わずに頷いた。なんだか、この二人、不思議な関係に見える。

上司部下のような、長年連れ添った夫婦のような、それでいて、妙な距離もある。
なんだろう?

「綾音様・・・あちらに夕食を用意しました。清香様と芝三郎様の分もありますので、召し上がってください」
言われて、やっと自分らが夕食時を随分逃していた事に気づいた。ぐううう・・・とお腹が鳴る。言われて鳴る、とは現金なお腹だと我ながら思った。

夕食は仕出し弁当だった。それもかなり高級なものとみえ、とても美味しかった。私と芝三郎は完食したが、さすがに清香ちゃんは無理だった。残った分・・・お包みできないかしら・・・。そうは言えないので、私と芝三郎で半分こした。

半分こしながら、ダリのことを思う。
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