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天狐あやかし秘譚

第15章 福善禍淫(ふくぜんかいん)


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【福善禍淫】行いのよい人は幸福が訪れ、悪事をなす人には禍がもたらされること。
善い事をしたらいいことがあって、悪い事をしたら悪いことがあるよ、ってそんな単純じゃなくね?みたいな。
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ぷわーん

大きな警笛を鳴らしながら、目の前、10メートル程下をかなりのスピードで鉄道が走り去る。秋の抜けるような青い空が目の前に広がる。風は涼しいが、皮膚に日が当たるとチリチリとした熱さを感じる。

1ヶ月ほど前なら、日焼けを気にして、こんな風に立ち尽くすことはなかっただろう。高架下をまた、電車が走り抜ける。

心臓は驚くほど静かだ。これからしようとしていることを考えると、これは不思議なくらいだった。

眼下には数本の線路が前後に伸びている。前方にはターミナル駅が見えていた。そういや、あの駅の近くだったね。あなたと初めて会ったのって。ある意味、運命の出会いともいえるかしら・・・。

眼下をもう一度見る。ドロドロと溶け合って重なり合う幾百人もの蠢く人影が線路にオーバーラップして視える。全員が、裸身の女性だ。それらは互いに互いを引きずり下ろすかのようにもがき、のたうち回り、苦悶の表情を浮かべていた。

仲間・・・私の大切な・・・仲間。
そう、あそこに行けば、寂しくない。怖くない。

ほら、呼んでる。呼んでるよ。
気づけば、ぐちゃぐちゃにもがき苦しんでいた人影が私を見上げ、手招きをしている。笑っている、笑っている・・・。

早く、行かなくちゃ・・・。あそこに堕ちれば、淋しくない、恐くない。
そして・・・彼を・・・今度こそ彼を、私のものに・・・できるんだ。

やっと行ける。これでいい、これでいいのよ。早く・・・早く・・・。
逸る気持ちで、欄干の上に登る。怖さはない。むしろ、恍惚とした悦びが身体を満たす。
もうすぐ行くからね、待っててね。

令児・・・

ふわり・・・と私は欄干から身を躍らせた。
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