• テキストサイズ

ネコの運ぶ夢

第15章 ネコの運ぶ夢


家の前のブロック塀に、膝を抱えるように座る影があった。
しばし立ち止まり、その影を凝視する。目を見開いた。

眠っているような髪の長い女性。白銀灯の明かりが頬を白く照らす。少し長いまつげが呼吸に合わせて動いていようだ。

まさか・・・。俺はそこに駆け寄った。
白銀灯の下にうずくまる影。

ああ・・・。俺は歩みを緩める。

座る女性の傍らに立ち、声をかけた。

「具合が悪いんですか?大丈夫ですか?」

少し息が切れて、声がかすれる。その声で、女性は顔を起こした。
次は確か、こうだ。

「大丈夫ですか?」
「ふにゃ?」
顔を上げ、俺を見上げた女性は、妙な声を上げると、ニッコリと微笑んだ。

「具合が悪いのですか?救急車を呼びますか?」
「音子は・・・・捨てネコ・・・いや、捨てられネコです・・・。」
「音子はお腹が空いてます
 できれば、親子丼を頂きたいです」

俺は吹き出した。
音子も吹き出した。
二人でクスクス笑い合った。

「台本と違うぞ」
「そうでしたか?」

「次のセリフは、俺だぞ。『ちょっとまっててくださいね、今、お巡りさんを呼んできますから』じゃなかったか?」
「そうでした、そして、音子は『お腹が空いてます』と市ノ瀬さんの服を掴んだんでした。」

俺が手を差し伸べると、音子はその手を取って立ち上がった。自然と引き合い、抱きしめあった。

柔らかいぬくもり。思わず抱きしめる腕に力が入る。

「ただいま、市ノ瀬さん」
上ずったような声で音子が言った。

「おかえり・・・音子」
声をつまらせて、俺は応えた。
/ 91ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp