第6章 お料理ネコ
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ちょっと足を伸ばして業務用スーパーまで来てみた。
まとめ買いしたほうが安く上がる。人手もいるならなお好都合だ。
俺は入り口から入り、次々とめぼしい食材をかごに放り込む。ああ、そういやパスタが切れかけていた、買わねば。
音子はあちこち物珍しそうに眺めながらついてくる。たまに、大きなベーコンを見ては「おお!」と感嘆の声を上げたり、業務用の調味料を見ては「大きいですー」と言ってみたりしていたが、基本的に何かを自分から欲しがることはしなかった。
「音子、お前も料理するんだから、足りない食材とか、調味料とか入れていいんだぞ」
言うが、特に首をふるばかりだった。
遠慮しているのだろうか?
「食べたいモノは?」
とも聞いてみたが、やはり首をふるばかりだ。
まあいいか。
めぼしいものをかごに入れ終えた。ところがふと見ると、先程まで後ろにくっついてきていた音子がいない。
どこいった?
少し探すと見つけることができた。何やら肉売り場でじっとしている。
「おい、音子」
声をかける。どうやら、合いびき肉をじっと見ていたようだ。特売というわけでもない。
なんだ、喰いたいのか?
「合いびき肉使いたいのか?」
聞くと、やはり首をふる。
「あの・・・市ノ瀬さん。さっき、なにか食べたいものは?っていいましたよね。
もし、もしも良ければ・・・、ハンバーグを、作ってもらえませんか?」
なんか、随分もったいぶった言い方だが、ハンバーグか。わかった。
そういや、音子がモノ的なものをほしいと言ったのは初めてな気がする。一緒に寝て欲しいとか、だきついていいかとか、名前を呼べなどは遠慮なく言ってくるくせに、何かがほしいというのは聞いたことがない。やっぱり居候、と思ってお金を使わせないようにという気遣いをしているのかもしれない。
ただ、ハンバーグかあ・・・。若干その工程を思うと面倒くさくなる。
そもそも、俺がハンバーグを作ったのは、小学校の時の調理実習のときだけだ。以降は作ったことがない。男の一人暮らしで、自分のためにハンバーグ作るというのは、なんだかちょっといただけない。ハンバーグには申し訳ないけど。
確か、ひき肉以外にも必要なものがあった気が・・・。
スマホで調べると、パン粉とナツメグが必要だ。あとはあるか・・・。
パン粉とナツメグを追加すると、俺たちはレジに向かった。
