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ネコの運ぶ夢

第5章 ネコの名前


気を取り直し、二人で向かい合って、トーストをかじる。アイスティーで喉を潤す。
「市ノ瀬さん」
「ダメだ」
「まだ何も言ってません」
「名前呼びはしないぞ」
「違いますよ、昨日のテレビの話です。
 もふもふカフェってあったじゃないですか。音子はあれに行きたいなって。
 市ノ瀬さんと一緒に行けたら嬉しいです。」
ああ、そういやあ、昨日そんなのやってたな。小型犬とネコがいて、触れ合いながらコーヒーが飲めるそうだ。しかし、遠いよなあ・・・。
「却下」
「えーいいじゃないですか。抱っこできるんですよ?音子は抱っこしてみたいです。
 市ノ瀬さんも抱っこ好きですよね?」
お前が言うな。別の意味に聞こえる。
「とにかく、犬、ネコカフェは行かん」
言ってからハッと気づいた。すでに遅し、音子はニヤニヤしている。
「今朝は二回もお名前を呼んでもらいました♡」

やめろ、ハートマークつけるな。
無邪気な笑顔にぐらんぐらんと気持ちが揺らぐ、これ以上は勘弁してくれ。
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