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ネコの運ぶ夢

第3章 身を寄せるネコ


ゲームは意外と盛り上がった。最初こそゲームをある程度知っている俺が勝てていたが、すぐに要領を掴んだ音子が勝つようになっていった。勝つと子どもみたいにはしゃぐので、結局勝っても負けても、俺は満足だった。

そろそろ、最後のゲームにしよう、と言った時、音子が「私が勝ったら市ノ瀬さんにほっぺにちゅ~してほしいです」と言い出した。

な・・・なに!?

なんだ、その王様ゲームみたいな報酬は・・・。
俺は俄然断ろうと声を上げようとしたが、まてよ、と考え直した。
「なら、俺が勝ったら、離れて寝てくれるか?」

一応「暑いから」と理由を言い添えた。そう言わないと、泣き出しかねない。

音子は、「むー」っと唸って数秒考えたが、カッと目を見開くと「わかりました!」と言った。今日、一番、というか、出会ってから一番気合の入った顔をしている気がした。

ゲームは白熱した。そして、最後の最後で、俺は・・・負けた。

「このゲーム、これまでに取った札をちゃんと覚えていると、どのカードを捨てればいいかとか、考えやすいんですよね」
音子がしれっと言う。嘘だろ、自分や俺の取ったカードを全部覚えていて、山札に残ったカードを計算していた、というのか?

へへへ〜と得意顔の音子。これは、相手が悪かったとしか言いようがない。
意外と、こいつは頭がいいのを忘れていた。

では!と音子はマットに横になると、布団をポンポン叩いて「早く!」と催促する。
まあ、約束は約束だし・・・。仕方なく、横になると、ぎゅううっと音子が抱きついてきた。

こ・・・これは・・・!

想像以上の破壊力だった。
「あ、そうだ!」
そのまま顔を傾けて頬を差し出す。
「ほっぺにちゅー」

ぐわん!と頭を鈍器で殴られたような錯覚を覚える。
もう、これ以上は勘弁して欲しい。

「はやくう!」

目を閉じて、頬にちゅっとキスをした。
「へっへっへー」
妙な笑い声を立てる音子。そのままおでこをグリグリと俺の胸に擦り付けてくる。

こ、これはなんという名の拷問だろう?
棒のように身体を硬直させつつ、早く意識が遠のけと祈ることしかできなかった。
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