第8章 恋人ごっこ(ホークス)
「……なに……?」
ホント、なにだよな。
何から話せばいいか、分かんないもん。
少しの沈黙の後、先に口を開いたのは繭莉だった。
「……もう、やめて……」
「なにを、」
「もう、繭莉の事、好きって言わないで」
今にも泣きそうな顔をするから、抱きしめたくなる。
「ホークスに好きって言われると、よく分かんないけど……怖いの……」
繭莉はついに、泣き出した。
「どうせっ、ホークスだって繭莉の事なんか捨てて、どっか、行っちゃうんでしょ?っ……嫌なの、1人になっちゃうのっ、怖いの……」
繭莉には、言い寄ってくる男なんて吐いて捨てる程居るのに。
何で俺に、そんな固執してくれんの?
また期待しちゃうから、やめて欲しい。
「俺じゃなくたって、会ってくれる人いっぱいいるじゃない」
「……違うの……」
何がどう、違うの?
「分かんない……よく、分かんないけど……違うの、他のひとと、違うの……」
それって、まさか……
「だから、いつか、捨てられる日が来るのかなって思うと……怖いの……だから、」
泣きながら、最早これは告白なんじゃないかと思うような事を吐露する繭莉の腕を思い切り引っ張って、抱き寄せた。
「は、離して……」
「離さない」
そんな顔で、愛しくなるような事言われたらさぁ……離してなんて、あげらんない。
「言ったでしょ?俺だけ選んでくれたら、死ぬまで愛してあげるって」
「う、嘘……」
「嘘じゃないよ」
華奢な身体が折れるんじゃないかと思う程、強く抱きしめた。
「怖いかもしんないけど……信じて、俺の事」
服の裾を、きゅっと掴まれた。
それで、どうして欲しいのか分かっちゃうとか、俺も大概どうかしてる。
「うん、分かってる」
顎を掴んで上を向かせると、ふいっとそっぽを向かれてしまう。
「こんな所で……やだ……」
そう言って、頬を赤く染める繭莉が新鮮というか、やっぱり可愛いなとか思うと、顔が緩んだ。
「じゃあ、どこでならいいの?連れてってよ」
彼女はそっと俺の手を握ると、歩き出した。
本当は、抱えて飛んでいきたかったけど照れてる繭莉を長く見ていたくてそのまま後ろを付いて行った。