【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第3章 When It Hurts to Love
仁美が近づくと、彼はゆるく片手を上げて「よ」と小さく声をかける。
「大盛況だね。」
仁美が声をかけると、研磨は軽く肩をすくめた。
「まあね。予想以上。」
「研磨が作ったゲームもあるんでしょ?」
「……ちょっとだけ。」
その言い方はいつもの研磨らしくて、仁美は少しだけ笑った。
隣で友達がタブレットを手にして、夢中でゲームを始める。
研磨のクラスの教室は人でごった返しているのに––––
研磨と仁美のあいだには、不思議な静けさが流れた。
友達が盛り上がっている隙を見計らって、仁美は研磨の受付の机に少し身を寄せた。
「……ねえ。」
「なに。」
「まだ……後夜祭に、クロを誘えてない。」
声は雑踏にかき消されそうなくらい小さくなっていた。
昨夜のあの瞬間の光景が、頭の中にこびりついている。
「チャンスあったのに……なんか、言えなくなっちゃって。」
研磨は仁美の方を見た。
けれど、何も言わなかった。