【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第7章 Obsession
だけど何故仁美が泣いているのか、黒尾には分からなかった。
だって仁美は自分を好きだったはずだ。
同じように求め合うことに疑問がなかった。
黒尾が自分の下着のゴムに指を通した時に、仁美は震えた声て言った。
「……私の好きが置き去りだよ…。」
仁美の言葉に黒尾の指が止まった。
仁美の言葉は衝撃で、黒尾は体を強張らせて仁美を見下ろした。
仁美は顔を隠しながら、小さな体を震わせて泣いていた。
急に黒尾の胸の中に静かな痛みが広がった。
「あ……仁美…。」
黒尾の掠れた声が聞こえた時に、仁美はとうとう涙が流れて、唇からは嗚咽が漏れた。
小さかった胸の痛みが、体中に広がったようだった。
痛む胸を抑えるより先に、黒尾は仁美を抱き締めた。
「仁美…ごめん…泣かないでっ。」
戸惑いを隠せない黒尾の声が耳元で聞こえた。
「うっ」と小さな声を漏らす仁美の手を優しく外していく。