第1章 初恋の思い出
昼休み、私は図書室にいた。
淡い期待を抱いて。
「あれ?ゆめちゃん、めずらしいね。昼休みもここにいるなんて」
聞き慣れた声、私の彼氏、逢坂くんだった。
でも実は今日待っていたのは彼ではなくて…。
「うん…ちょっとね」
そう答えながら、私はなんとなく後ろめたい気持ちになる。
「それに…なんだか今日はまた一段と可愛らしい本を持っているね」
私が胸に抱えている「森の魔法使い」を指して彼が言う。
やっぱダメだ。隠せないな。
「実はね…」
私は逢坂くんに話してみることにした。
「逢坂くん、雨宮久遠っていう男の子知ってる?2年なんだけど」
「男?さあ…知らないけど」
彼が怪訝な顔をする。
「知らないよね。私もいろんな子に聞いてみたんだけど、みんな知らないって…。
あのね、雨宮くんて私の子供の頃の友達なの。
その子心臓が悪くてずっと入院しててね…」
私の声がちょっと涙声になってくる。
逢坂くんが心配そうに私を見守ってくれている。
「いつの間にか転院してて…会えなくなっちゃったんだけど…」
私はにじんできた涙を指でちょっと拭う。
「実はその子に昨日ここで会ったの。
お互い大きくなったけど、すぐ私のこと気づいてくれて…。
子供の頃の約束…病気が治ったら一緒の学校に行こうねって約束…叶ったよって…」
私の目から涙がこぼれ落ちる。
逢坂くんが私にそっとハンカチを差し出してくれる。
「ありがとう…」