第38章 王者の来訪
そして三日後のこの日は気持ちいほどの快晴だった。
「…予選日和だね!」
「そうだな」
「でも…」
「ん?」
「……なんでもない!」
「なんだよ、言って?」
朝の支度をしながらも雅は加賀に言いかけた言葉を飲み込んだ。
「…雅?何?」
「あの、おせっかいかも…」
「何?」
「今回のレース、アタックって城最後でしょ?だから、ロード面、かなり熱くなってるだろうからって言おうとしたけど…」
「…けど?」
「そのあたりも知ってるだろうからって思っただけ…」
「ん、知ってる。」
「…あー、だよね…」
「でもよ?」
そう言いかけてふわりと包み込む様に抱き寄せる加賀。
「…そうやって気遣ってくれんのは嬉しい」
「クス…よかった…重たいって思われたらって思った…」
「んな事ねぇよ。サンキュ」
ゆっくりと離れれば『行くか』といい、二人そろってバイクにまたがれば会場に向かっていく。
「あれ…ここって…」
「あぁ。」
「なんでここ?」
「おいおい、勘弁」
「だって…!」
そう、そこはほんの数日前に来たばかりのコースだった。
「雅にいい事教えてやるよ。」
「え?」
「何もサイバーとインディのコースが違う所ばかりってわけじゃねぇんだよ」
「……じ、じゃぁ…今回はここ?」
「つか気付かなかったのかよ」
うん…と俯いて返事をする雅に小さく笑う加賀だった。
「…たまぁにそういう所抜けてんだよな。」
「ごめん…」
「クス…ま、よろしく。」
「ん」
そうしてガレージに入っていくのだった。しかしその風景は数日前のスゴウのガレージから見た風景とは少し違う。
「ガレージまでは違ったか…」
「ぁあ?」
「なんでもない」
「そ?」
小さく笑う加賀の前にはマシンとメカニック三人がいた。