第35章 嫉妬と甘い熱
「雅?そろそろ戻るか?」
「あ、うん!!」
「今度は?決勝か?来るの」
「あぁ。そのつもりだ」
「そっか、じゃぁまた!」
「おぅ!」
「またね?ミキさん!」
「また連絡する」
そうして四人はそれぞれ別れていった。その日の夜。雅は少しだけ考え込んでいた。それに加賀が気づかないわけもなく、風呂から上がれば雅の横に座って肩に腕を回した。
「…どうかしたか?」
「え?」
「何か考え事?」
「…ううん?なんでもない、ちょっとぼーっとしちゃっただけ…」
「それ通用すると思ってんの?」
「…ッッ」
「ハァ…ちゃんと話してみ?聞くから…」
「…本当に…どうでもいい…ヤキもちみたいなものだから…」
「って事は俺に関係してるって事だよな?」
「…それは、そうなんだけど…」
グッと抱きしめる腕に力がこもる。
「話して?」
「…去年の頭にもう葵さんから撤退の事聞いてて、それでずっとスゴウがグランプリ取ってたからっていうのもあったんだろうけど…途中で新機導入して。もしかしたら葵さんの為のグランプリだったのかなって思って…」
「…雅」
「…だって…もしそうだとしたら最終レース、葵さんの気持ちも考えないで…私おせっかいだったし…それに…」
「あのな、雅」
そう切り出せば加賀は肩から腕を離し雅がきゅっと握りしめている両手にそっと触れた。
「…確かに今日子さんには恩もあったしよ。最後だっていうならグランプリ取って終わりたい。そうも思った。」
「…ッッだよね…」
「でもよ、途中からそれだけがグランプリ狙う理由じゃなくなった。お前が…雅がいてくれるようになったから。」
「…でも、もしAOIがサイバー撤退しないってなってたら…?」
そう呟く雅の目には迷いが揺れていた。