第22章 柔らかな時間
全ての身支度を終えた加賀はそのまま鞄を持って部屋を後にしようとしていた。
「…ほら、雅。」
「ん…」
「また会えるから」
「…解ってるよ…明後日には会えるのも解ってるもん」
「甘えただな…本当に…」
「子供だって言いたいんでしょ…」
「いや?」
服の裾をつまんだままの雅の頭を撫でればどこか嬉しそうに笑っている加賀がいた。
「…本当に俺の事好きだなっと思ってな」
「…今更…だよ…」
「それもそうだな」
額にそっとキスを落とす加賀。
「…出るぞ?」
「ん…」
「見送りは大丈夫だ」
「…そうなの?」
「見られたら厄介だろ?」
「そうかな…」
「そうだろうよ」
クスクスと笑う加賀だったものの、一緒にエレベーターに乗る。二階下についた時だ。
「…雅…」
扉が開く寸前でくいっと顎を引き寄せればキスを唇に落とした加賀。すぐに離れて扉が開いた時に雅は降りていく。扉が締まれば加賀はサングラスをかけてエレベーターの壁にもたれた。
「厄介なのは俺の方だな…たく…素直になれねぇ…」
そう、見られたら厄介だとかはもう関係がなかった。他人からの視線ではなく、ただ自分がロビーまで一緒に行ったら連れて帰りそうになるから…それだけの理由だった。
「…だせ…」
チン…という軽い音と同時に開いた扉。何喰わない顔でゆっくりとフロントに向かう。チェックアウトを済ませればそのままホテルを後にしていったのだった。
雅は自身の部屋に戻り、必要なものを持ってお粗面お朝食に向かっていった。時間的にはぎりぎりだったものの、それでも軽く食べることも出来た。
「…ハァ…」
さっきまで一緒に居た加賀の事が頭から離れなかった雅だったものの、確かにその体には加賀の熱が残っていたのだった。