第22章 柔らかな時間
ふと視線を落とせば、胸元にいくつかの痕が散らばっていた。一気に昨夜のことが頭をめぐり、言葉をなくしつつもそっとその痕を指でなぞる。
「…もぉ…」
小さすぎるほどの声はシャワーの音にかき消されていく。キュッとシャワーの湯を止めてもまだ乾かしていた加賀に声をかけた。
「…城君…」
「ん?」
「タオル…取ってほしい…かも…」
「ん」
そうしてカーテン越しに手渡されるそれを受け取って、雅は拭き上げた。タオルで体を隠しながらもシャワーカーテンをそっと開けた雅は鏡越しに加賀と視線が重なる。
「…あり、がと…」
「いいえ」
「…」
「ほら、来いよ」
そういえば手招きをして中から出させれば鏡の前に立たせる。
「あの…ッッ」
「乾かしてやる。」
そう言って加賀は雅の頭にドライヤーの風を当て、軽く手で髪を振っている。
「…きもちぃ…」
「そうか?」
「ん…」
加賀とは違い時期に乾いた雅の髪。ドライヤーを片付ければそっと加賀は背中から抱きしめた。
「なぁ、雅?」
「何?」
「お願いあんだけどよ」
「何、私でできればいいんだけど…」
「雅以外じゃ出来ねぇよ」
「えー、なんだろ…」
そう返事をする雅の首筋にツッ…と指を滑らす加賀はニッと笑いつつも話し出す。
「…これと同じの、俺も欲しい」
「…へ?」
「だから、」
そういえば雅の手を取り自身の首筋に連れていく加賀。
「ここ、付けてくれねぇ?」
「…ッッだめ、だよ!そんな…」
「なんで?」
「なんでって…そりゃ…」
「理由ねぇならいいだろ?」
「…ッッ…ある!」
照れながらもはっきりと『ある!』と言い切った雅。