第21章 狂おしいほどの夜
「んー?」
「気持ち…よかった?」
そう少しだけ不安そうに聞く雅の顔を見てふっと口元が緩む。
「…気持ちよくねぇ訳ねぇだろ…ッマジで…」
「ならよかった…」
「そういう雅は?」
「ん、気持ちよかった…」
そう伝えれば時折加賀が眉間にしわを寄せる。
「…どうかした?」どこか痛い?」
「ちが…ッッ…その…締めてくるから…」
「え、締めるって…」
「ナカが…気持ちよすぎて…」
「……ッッそんな…」
「どぉこが気持ちよくねぇって…?」
クスっと笑えばゆっくりと体を起こし、雅の中から一物を抜き出した。
「…ッン…」
心の中で『あぁあ…』と思いながらも溜まった白濁とした欲望の量に加賀は自分自身に呆れてさえいた。
「…痛くねぇか?」
「ん、ちょっと…足だるいかな…」
『無理させたか…」
「そうじゃない、平気だよ」
そう答える雅の横に横たわる加賀。そんな相手の胸元にすり寄る様にしてくっついていく雅の背中に腕を回して加賀は問いかける。
「甘えてくれんの?」
「…こういうの、嫌い?」
「ま、雅以外には興味ねぇ」
「私ならいいんだ?」
「まぁな、悪い気はしねぇよ」
「…そっか」
「ん」
「…あのね…城君…」
「ん?」
「今言う事じゃないかもしれないんだけど…」
もぞっと距離を詰めれば加賀は雅の足に自身の足をも絡めた。
「…何?」
「今季、もし城君がグランプリ取ったら…一緒にアメリカ連れてって…?」
そう雅は加賀に小さくもはっきりと伝えたのだった。一瞬ピクリと動くものの、ぐっと抱きしめる腕に力が入り加賀は雅に問いかけた。
「後悔、しねぇ?」
「ん、しない」
「もしかしたらもう二度とサイバーの世界に戻れねぇかもしれねぇよ?」
「ん、」
「インディーだと、それこそ危険が多い。」
「勉強するよ」
「……ハァ…」
小さなため息の後に、そっと髪をなでながら加賀はゆっくりと、『わかった』と確かに伝えたのだった。