第2章 最終選別(さいしゅうせんべつ)
当時の車内におけるやり取りは、隠も聞いていたのだが…
隠(とても三歳と七歳の会話に聞こえない…)たらーり
冷や汗が止まらなかったという
余りの利発さに、聡明さに、互いへの配慮に、心配りや気配りに、目を見張っていたとか
当時、車で駅まで行き、特急列車で大阪から新橋まで行ける
ただし、特急列車と言っても17時間40分程度掛かることは変わらないので
ほぼ一日を片道に費やされることになる
三都村が大阪から離れていることも起因している
というのは置いておいて……
起きて初めてしたのは柔軟体操
それから伸ばし運動をして十分解した後で、ゆっくりと動く練習をした
先ずは全身運動の把握、出来ることも理解し、その上で今出来る最善の技を繰り出せるように調整する
傷が塞がったのは目を覚ましてから四日後だったが
大事を取って、もう一週間休むことにしていた
龍神から神であることを伝えられていたこと
再び全てを消す結末を与える存在に終止符を打つ為に遣わされたこと
それらを耀哉は伝えられていたらしいが…当時の私は知らないままだった
前世に置いての名は、高杉正能(たかすぎまさむね)
幼名は竹若丸(たけわかまる)
前田利家様にお仕えする、足軽組頭で
賤ケ岳の戦で殿(しんがり)を勤め、農民と馬鹿にして笑った武士を助ける為に脇差を投げ付け
「こっちだ!」と叫び、皆を逃がす為に囮となって持ち前の足で敵を引き連れて逃げた
だが、逃げ込んだ小屋に武器が無かったこともあり、そのまま討ち死にした
当時、風月流という活人剣を主に使っていた
どうしても切り抜けない時の切り札として、そうなる前の流派の技を叩き込まれていた
その名は…真月流……
殺人剣である真月流(しんげつりゅう)が
活人剣という風月流(ふうげつりゅう)になったのは
前世の父上が家督を継いでから
つまり
一族郎党全て、己以外死に絶えた時だった
父上の父上は、武将を目指し
女子供容赦無く叩き斬るやり方で怨みを買い、憂き目に遭った
己だけでなく、血族全てを巻き込んで……
父上は、母に水瓶の中に隠れさせられ難を逃れたという
財産に手を付けられ、家宝を除いて全て毟り取られたという
雀の涙ほどしか無く、家は全て荒らされ
唯一の生き残りとして、初陣を先月果たしたばかりの父上は家督を継いだ
