第11章 ・東京
「違げえよっ!誰がそんな話してんだ……そんな趣味もねえ……過剰な『欲』は、剣の道の妨げになる……だから修業で、理性や自制心を鍛えに鍛えたんだ」
ゾロの低い声色は、その場の空気の流れを一瞬だけ、止めた。
その態度も一貫して、終始落ち着いている。
軽い生き方をしている男の言動ではない。
その誠実さに、キャスト達の視線が自然とゾロに集まって行く。
ロキはその流れに逆らう様に、ゾロを茶化し始めた。
「……って事は、お前、まだ女とヤった事ねえんだろ!まさかの……ねえ」
ロキはグラスを傾け、ニヤけながら訊く。
ゾロは眉間に皺を寄せ、鬱陶しそうにボソリと返した。
「……うるせえなあ……あるよ……」
「え、え!?ま、マジで!?マジの話かよそれ!!」
彼の声を遮る様に、ゾロは酒を煽る。
キャスト達は、そんな彼を熱い眼差しで見詰めている。
「……お前な……そんな事で嘘言ってどうすんだよ」
「散々女に興味ねえって言ってるクセに……まさか、お前の方から声掛けたのか?」
「……向こうからだ」
予想外の返答に、ロキは驚き目を丸くする。
「ま、マジで!?まさかの逆ナンだと!?……な、何人だよ!」
「そんなに居ねえ……三人だけだ」
「は!?さ、三人!?まさかの、逆ナン三人!!?」
「……その言い方、止めろ……」
ゾロは鬱陶しそうな表情を見せつつ、酒を飲み干した。
空になったグラスをテーブルに置くと、青い髪のキャストが水割りを作り始めた。
グラスに氷がぶつかる音が、ゾロの耳に届く。
「お前……それがモテてるって言うんだよ!!なのに女に興味ねえって……硬派気取ってんじゃねえよ、カッコ付けやがって……」
「別に気取ってなんかいねえ。強くなるのに女は要らねえ……ただそれだけだ」
「いやいやいや!本当に要らねえなら……ヤらねえだろ……お前って本当素直じゃねえなあ。あー、もしかして、ムッツリスケベ君かね」
ニヤニヤしながら言うロキを、
ゾロは一瞥する。
呆れた様に溜息を吐き、吐き捨てる様に言った。
「あのなあ、てめえ……いい加減にしろよ。泣き腫らしたツラで縋り付かれたり、しつけえ男に絡まれてたのを助けたら家に来いって言われたりよ……こっちは断ったんだが……振り払えなかっただけだ……」
ゾロは顔を顰め、酒を喉に流し込む。