第36章 甘美な白い山✿保科宗四郎✿
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙誰か僕にチョコくれへんのぉ?!僕、手作りモンブラン欲しいんやけどー!!」
それ、チョコじゃない……執務室で両手を広げて、叫んでいる。私以外、誰もいないのに叫ばないでくれるかな。
「副隊長がもらえないのは、厳しいからですよ。渡したくても渡せないんです。格上過ぎて…」
「君もそうなん?」
「私は元から渡すつもりなんてないですけど」
副隊長は机に伏せて拗ね始めた。「酷ない?」と不貞腐れた声を発している。私が渡したら――本命になってしまう。だから渡さない。毎年作ったモンブランは私の胃の中で溶ける。
「美影ちゃ〜ん、手作りやなくてもええから、なんか欲しいんやけど……ほっぺにちゅーでもええで!」
沈んだ声から一気に大きくなる声。身体を起こして、キラキラした顔で見つめてくる。えっと……そんな開眼して見つめないでくれませんかね…心臓が暴れて、咄嗟に顔を逸らした。
……したら、静かになってくれるだろうか。たぶん、何もしなければ、まだまだ続くだろう。どんどん要求が難しくなっていく。それは毎年、経験済みだ。
「……キスマ……」
「ああ!もうっ!します!ほっぺにちゅーでいいんですよね!?」
副隊長は嬉しそうに頷いた。なんで私なんだろうか……手の平で転がされている気分。立ち上がって副隊長に近付き、目をぎゅっと瞑って、一瞬だけ唇を押し付けた。
これで満足しただろう、と離れようとすると、頬を両手で掴まれて、唇と唇が重なった。
___________end.