第5章 伏黒
また一つ歳を重ねた私たちは、とある場所に向かっている。
あの伏黒甚爾の息子、伏黒恵くんを迎えに行くのだ。
いろいろ面倒臭い手続きは悟さんが全て終わらせた為、私には世話をしてくれと言う。
自分も時間がある時は顔を出すからと。
世話をするのはいいが、私に出来るかな…。
繋がれた手が突然絡んできて恋人繋ぎになる。
「めっちゃ似てたらどうしよう。あいつに似てたら僕じゃ相手出来ない…。」
悟さんはあれから口調が柔らかくなり、一人称を俺から僕に変えた。
まだ違和感があって笑いそうになってしまう。
「面倒を見ると決めたんなら、似てたとしてもちゃんと相手してください。」
「だから緋那に頼んでんだよ?よろしくね。」
丸いサングラスから覗く蒼眼が、私を捉えて弧を描きニコッと微笑む。
あなたが決めたことでしょう?と睨めば、奥さんなんだから手伝ってよーと軽く言われる。
「ね?緋那好きだよ。」
「っ!…調子いいんだから…もうっ!」
何かお願いしてくる時は好きと言うようになった。
私がそう言われればすぐ許してしまうから…。
まあどうせ、世話をするのは了承しまっているから、好きと言わせる為にこんなことを言っている。
きっと彼もそれに気付いていて、こんな茶番をしてくれているのだろう。
そんな会話をしていると道行く人たちに見られるが、もう結構慣れた。
悟さんの顔が良すぎて身長も大きいから目立ってしまうのだ。
小道に入って行くと、ランドルセルを背負った男の子の背中が見えた。