第3章 結婚
そして12月7日。悟さんは本家に呼ばれたらしく、何故か私にも来いという。
あれから何もして来なかったくせに、いきなりご両親に挨拶しなければいけないのか!?
付き合っているのかどうかすらもよくわからないのに!?
いやでも、さすがに付き合ってはいるのか?ずっと一緒にいるって約束したし…。
当日の朝にいきなり言われたもんで、新幹線の中でそんなことが頭の中を駆け巡る。
チラッと悟さんを見ると、サングラスを外して目を閉じている。
寝ているのだろうか。
京都につき、少し前に目を覚ました悟さんの後をついていく。
電車を乗り継いだりしてついた先は、開いた口が塞がらなくなる程の大きな屋敷だった。
道中、私はあまり喋らずに悟さんに合わせるよう口酸っぱく言われた。
どうしてそんなことを言うのか…。
悟さんはインターホンを押したりとかそんなことはせずに、ズカズカと屋敷の中に入っていく。
当たり前か、自分の家だし。
それに……ほら、使用人さんがすぐに気付いて声をかけて誰かを呼びに行った。
恐らく、ご両親だろう。
そのままズカズカと歩く悟さんに小走りになりながらついていくと、それに気付いた悟さんが振り向いて手を差し出したので、その手に私の手を重ねると、ギュッと握られてまた歩き出す。
悟!と彼を呼ぶ声が聞こたのでそちらを向くと、ご両親であろう御二方が縁側から声をかけていた。
そして悟さんを見ていたその視線は、彼と手を繋いだ私に注がれる。
緊張して悟さんの手をギュッと握り返してしまった。
それに気付いた悟さんは振り向いて、私にしか聞こえないような声で囁く。
「大丈夫。俺に合わせてればすぐ終わっから。」
その言葉にコクっと頷いて、ご両親に頭を下げた。
何故私を連れてきたのだろう…何も話してくれなかったので、不安で堪らなかったが、悟さんの大丈夫という言葉で一気に心が軽くなった感じがした。