第1章 初恋
ご飯を食べ満腹になり、校庭で戯れる先輩2人を見つめる。
一人は六眼と無下限呪術を持ち生まれ落ちたバカでクズで無駄に顔がいい男。
一人は非術師の両親から生まれた呪霊操術の使い手で前髪が変でクズで無駄に顔がいい男。
顔がいいとことクズなとこしか接点がなさそうな2人は、きっと親友というものだろう。
そんな2人がいつものように戯れ…喧嘩をしている。
1ヶ月前にこの呪術高専に入学したばかりだが、この光景を見るのは初めてではない。
3日に1度は見てるんじゃなかろうか。
何故そんな私が2人を見つめているかというと、あのバカに恋をしているからだ。
初恋だと言うのに、どうしてあんな人を好きになってしまったのだろう。
初恋は叶わないと言うが、見事に私はそれを遂行することだろう。
あの男は恋愛に興味はないのだ。相当遊んでいるそうだが。
彼は六眼と無下限呪術を持っていることで、生まれた時からあの五条家の当主になることは決まっている。
許嫁という、私には縁もないものも、彼にはいるのだろう。
いつも後輩の私を揶揄ってくる彼はバカとしか言いようがない。
幼稚な悪戯ばかりしてくる。
休み時間に私の消しゴムを盗んで行っては次の授業で私を困らせたり、パンツが見えていると言われれて見てみると何も見えていなかったり…しまいには私のスカートをいつの間にか奪い履いている。
もはや、セクハラだ。
それでも何故好きになったのか…私は知っているからだ、彼にも優しいところがあるのだと。
初めての任務で失敗してしまって怪我をして帰ってきたら、一番に駆け付けてきてくれたのは彼だった。
硝子先輩がすぐ治してくれたが、その後も彼はずっと世話をしてくれたのだ。
怪我はもう治っていたのに、私を気にかけ優しく接してくれた。
いつも揶揄ってくる彼が時より見せる優しさや柔らかい表情に私はコロッとやられてしまった。
五条家の時期当主、六眼と無下限呪術を持っている、将来を約束されている、顔がいい。
世間の女共はそんな名声にいくらでも寄ってくるだろう。
きっと、彼自身を愛しているのは私だけだと自負している。
「私じゃダメですか…?」
呟いた声は昼下がりの暖かい空気に溶けていった。