第9章 いぇ~い、王太子殿下見ってる~?
―――おかしい。
マクシミリアンは今夜のプロムの控え室で考える。
朝から、私の側近であり親友のエドヴィン、ステファンと連絡が取れないし登校もしていない。
あの生真面目な二人が?!何かがおかしい。
更に見当たらないのは二人だけではないのだ。
―――『ユーリア・リンドバリ』。
愛しい恋人までも姿を隠していた。
家に使いをやれば、『(三人共)普通に登校して行きました』という返事がある。
今夜は決戦の日―――婚約者『シルヴィア・ボレリウス』のユーリアへの『暴行』を糾弾して。
それを理由に婚約を破棄し、改めて『ユーリア』と婚約。
そういう手筈だった……。
プロムの準備は万端整い、後は三人さえ顔を出してくれればいつでも作戦決行なのに。
そういえば、シルヴィアも挨拶に来ていない。
一応とはいえ、まだ婚約者だ。
それも、私、王太子の。
早目にやって来て待つのが普通の筈だが―――。
迎えに位、行くべきだっただろうか?
否、シルヴィアだってもう自分がお飾りの王冠でしかない事に気が付いている筈―――。
すると控え室の戸が開く。
エドヴィン達か?!と顔を上げるとそこには映像再生用の水晶を捧げ持ったメイドが居る。
「失礼致します。『マクシミリアン・エクホルム』王太子殿下。
シルヴィアお嬢様からのご伝言です」
メイドが映像再生の詠唱をした。
パアと水晶が光り暮れなずむ室内に―――、
『お゛っ、おひっ、や゛、やべっ、て、もっ、無理ぃぃぃ~!!』
響き渡るのは聞き間違えようもない、エドヴィンの声だ。
そしてピントのあっていない映像の中に人物が映り込み焦点を結ぶ。