第1章 もう嫌なんです。
はあ、とため息をつく。
頭がガンガンして、胸は張り裂けんばかりに脈打つ。
「サンディ、大丈夫?」
戸の外のアスコアッテが声をかけてきた。
「大丈夫よ」
扇で顔をあおぐ。
―――嗚呼、疲れたな。
何でこんなに男に振り回されなきゃいけないんだろう?
私が何をした?アレクサンドラがそんなに悪い事をした?
いやまあ、アレクサンドラはちょっと悪かったかもしれないけど……。
笑みが漏れた。
もういいや。
見れば部屋に真紅の薔薇が沢山いけてあった。
立ち上がってそれを小脇に抱える。
真紅は王族を象徴する色だ。
そしてバルコニーに出た。
下は窓からの光が舞っていて綺麗だ。
今夜の為に誂えた王太子殿下の婚約者である事を示す豪奢な真紅のドレスをたくし上げバルコニーの縁に立つ。
(嗚呼ほんとバカみたい。男に振り回されて。私もアレクサンドラも……)
「サンディ!」
どうやら私が余りに出てこないので痺れを切らしたアスコアッテが入室してきたらしい。
「さよならバイバーイ!」
薔薇を抱えて私は足を踏み切った。
そこからどうなったかは分からない。
ごめんね神様転生させてくれたのに……私もう疲れたのよ。