第6章 断罪イベントは蜜の味
ふう、これからよ。
「殿下、フィリップ殿下が正室になさるのはどちらですか?」
勿論私しかない。
レーヴェンヒェルムは男爵家、―――とてもではないが、妻室にはなれないのだ。
「フィリップ殿下」
私が言う。
「フィリップ殿下」
エメリが言う。
「……私は」
悩んでしまわれるのね。
悲しいわ。
「わたくしから申し上げた方が良いのかしら。婚約は破棄致しましょう。私もこんな庶民に手を付けた方に嫁ぐのは不服です。……殿下、王太子の座をお退きあそばせ。そうして、本当に幸せにしたい方を幸せにして差し上げたら如何です……?」
―――まあ、あの朗読の後にそう思えるかだけど。
はっきり言ってこの場にいるうら若き方もそうでない方も半数近くがエメリと何らかの関わりがあった。
「私はお前の何が不服だったのだろうか」
ポツリとフィリップ殿下が漏らす。
さあ何かしら?
気が弱い所?
殿下の前で泣いた事が無い所?
お祝いの贈り物を返礼された事がないのに不満を漏らさなかった所?
病んで自殺までしたのに、それでも『フィリップ様のお嫁さん』が諦められなかった所?
―――一体なんだったのかしらね。
ヴェロニカの人生って。