第13章 指輪
手を洗って戻ってきてベッドの上に乗った彼に、なにしてるん?と聞かれる。
「ごめんなさい…。」
「僕も嫌なことしてごめんな?おいで。」
頭を撫でられたので、怒ってないのと問えば、怒ってへんよと笑ったので、彼に促されるままベッドの上に戻る。
セーフワードを決めてるのにそれを言わずに泣いて嫌がったのに、どうして怒らないのだろう。
バスローブを脱がされて裸のまま抱き合うと、そのまま彼の腕を枕にして横になる。
「ねぇ、もうほんとにしないの…?」
「んー…美影がしたいならするで?でも、優しく出来へんやろうから、僕のこと嫌いになるんちゃう?」
あ、これ…怒ってる。
嫌いにならないって言ったのに…。
激しく求めれるのは嬉しい。嬉しいけど…気持ちよすぎて怖くなっちゃうから……それを伝えようと思ったけど、先程拒否したことは事実だから、どうしていいかわからなくなる。
付き合うの初めてだから、もうどうしたらいいのか…。
一度別れて他の人と付き合って経験を積んでから…いや、宗四郎さん以外と付き合うのは絶対嫌だし…。
マイナスなことをグルグルと考えて、胸がモヤモヤして苦しい。
付き合えて嬉しいはずなのに、付き合う前の方がよかったって思ってしまう自分もいる。
あんなに辛かったのに…。
すると彼が、明日の挨拶を中止にするかと聞いてきた。
私を家族に会わせたくなくなったんだろうか。
ここで、嫌だと好きだと甘えても、きっと彼を嫌な気持ちにするだろう。
というか、もう甘えられたくないだろうか?
全部、嫌な方向に考えてしまう。
何を言えば正解なのかわからない。
これからのことをもう少し考えようと言われて、一度えっちを拒否することはそんなにも大きなことなのかと、グルグルと考えてしまう。