第1章 群像の垣間見
存在の意義は、なんだ?
私は。
何のために存在する?
私がいま、ここに立てる正当な理由は。
考えてると、必ず声が聞こえてくるんだ。
ずっとずっと前の記憶の中の、
声色の違う4つの声が。
知ってる。この声。
一つ残らず全て。
分からないわけがない。
「お前が言ったんだろ?
歩き続けろって。」
ば〜か!歩くなんてすっトロイことすんな!
「間違ったときは、
正しい方に手を引いてくれるでしょ?」
その前に間違わない努力をしろよ。
手間取らせんな。
「ありがとう。拾ってくれて。」
捨て犬じゃあるまいし…
「なぁ。“獣道”って知ってるか?」
知ってるも何も。昔見たことあんだろ。
ほんと、揃いも揃って。
どうしようもねぇな、お前らは。
…あれ。
なんで今、こんなことを思い出してんだ?
ダメだ。集中しろ。
過去にあったことは、いま考えるな。
なぜって。
ここは戦場。
現在進行形の揺るぎないリアル。
今あるもの。それが全てだ。
確かなものなど、
他には何一つとして存在しない。
過去も。未来も。
今は重要じゃない。
コートは戦場。
私に向けられた、たった一つの事実。
ここで戦う。
それが私の役目で。リアルで。
与えられた事実なんだ。
それが全て。
目の前にある試合に勝つ。
それが明日へ。次へ。未来に繋がる。
そしてまた、戦場へと向かうんだ。
だから声を出せ。力の限り。
ひたすらに走れ。最後の一瞬まで。
この場を全て、侵食してみせる。
まっさらな水が、少量の絵の具で染まるように。
全てを網羅することで、次へと繋げ。
私は。
何のために存在する?
もう二度と。
負けないためだ。
私の名前は。
藤堂 天。