第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
怖くて怖くて仕方ない。
できれば綱手川さんを説得して、落ち着いてもらいたかった。
本当に彼は何もしてないんだろう。
補助監督の仕事を辞めさせられ、きっと自分を追い込み、逃げたくても逃げられず、絶望したに違いない。
同情はするけれど、だからといって私に乱暴なことをするのは、違う。
「おねっ…がぃ……綱手川さ…やめっ…」
ぼたぼたと涙を流し、私は懇願した。
まだ間に合う。
きっとーー…わかってくれる。
「うるさいっ!うるさい!!」
「っ!」
「もうダメなんだよ…もうこうするしか…!」
「いやっ!」
私を見下ろす綱手川さんの目を見て、私は絶望した。
本気の目だ。
ーー…もう、何を言ってもだめだ。
綱手川さんの手が、私のズボンにかかった瞬間、私は足をばたつかせた。
『悩みはしても絶望することはないかなー。』
『のいつも笑ってるところとか、明るい所とか、好きだよ。そんな小さな好きが集まって大きな好きになってる。』
ご…じょう…さん?
こんな時にまで思い出される消えた記憶。
ーー…絶望しそうだよ…五条さんっ
「やだっ…!好きな…ひとがいるの!私も…!」
「うるさいっ!!もう!止まれないんだよ!」
バシッと頬をはたかれ、私は息が止まりそうになった。
ーー…痛い。怖い。
「たす…けて……五条さ…っ…」
そうだ。
傷を付ければ、五条さんに気づいてもらえる。
腕かどこかに、小さな傷を付ければ、彼にも傷がーーー…
「…えっ」
なんで、そう思ったんだろう。
傷を共有するなんてーー、そんなこと…
『どうやら、僕とキミの心臓が繋がってしまったらしい。』
そうだ。
なんで、術師でもない私が、あんな雲の上の人と一緒にいたんだろうかと考えてた。
なんで、恋人になったんだろうって。
どうやって知り合ったんだろうって。
ずっとわからなかったけどーー…
私と五条さんは繋がってたんだ。