第12章 二人は
お屋敷につくと、玄関には男性の着物を着た方が待っていた。
「おかえりなさいませ、悟様。」
「服は自分でする。今日はさがっていい。」
「かしこまりました。」
今までこんなお出迎えなんてなかったのに、今日は何故だろうかと私は抱えられたまま悟さんを見上げた。
「今日は当主として家を出たからね。」
「…そっか。」
私の疑問を感じ取ったのか、悟さんはそう教えてくれた。
足早に廊下を歩き、私の部屋に行くのかと思いきや、悟さんの部屋に連れてこられた。
私をゆっくり下ろし、私は立って悟さんを見上げた。
悟さんは私の両肩を掴んで、じっと見下ろしている。
ーー…見つめ合う時間。
「はぁ。」
悟さんはため息をついた。
「…ごめんなさい。騙されて勝手についていった。私のせいで余計に他の家の方とのいざこざをさせてしまった。それに…」
悟さんは手のひらを優しく私の口に当てた。
私にそれ以上話させようとはせず、何も言わずに奥に行ってしまった。
「…?」
ポツンと立って待っていると、悟さんはタオルを濡らして戻ってきた。
「ほら、おいで。」
頬を片手で優しく包まれると温かい濡れたタオルで顔を拭いてくれた。
タオルは瞬く間に赤くなっていく。
「宿儺に傷は塞いでもらったかもしれないけど、血は戻ってないはずだからしばらくは体調気をつけて。」
「うん。」
優しく優しく血を拭いてくれる悟さんの口調は、これまでにないくらい穏やかだ。
「…今はもう心臓はと繋がってるんだな。」
「ドキドキしてる…?」
「あぁ。いつもので安心する。」
いつもドキドキしてるもんね、私。
「…啓明の屋敷の呪霊が話しかけてきたの。」
「話せたのか?かなりの上級じゃないか?」
「ううん。消えかけの小さな呪霊が頭に話しかけて、ずっとそばにいたから、お礼に一度だけ私にかけられた呪いを移動してあげるって。」
「それで、が刺した時、啓明がやられたのか。」
「うん。」