第18章 *一番*〜降旗光樹〜
香奈side
「何かで一番になったら、付き合ってあげる」
名誉がほしいとか、そういう意味で言った言葉じゃ無かった。
…でも、その言葉が降旗君を傷つける事になるなんて。
「ごめん…俺、一番になれなくて…っ」
IH後、降旗君は、私を抱きしめたまま泣いていた。
理由は、桐皇に負けたからとかじゃなくて、『自分がチームの戦力にもなれなかったから』。
気づかなかった。
降旗君が、私の言葉にずっと縛られていた事に。
「俺、やっぱり…香奈ちゃんの彼氏になんて、なれないよ…。」
私の首筋を伝った涙が、床にポタポタと落ちる。
彼の震えを全身で感じる。
私がずっと、苦しめてたんだ。
本当は私も、降旗君の事が気になってはいた。
降旗君に告白された時は、本当に嬉しかった。
だからこそ、私にどれだけ本気なのかを見せてほしかった。
でもね、もういいの。
こんなに本気だって見せてくれたから。
これからは私のためじゃなくて、自分と、自分の仲間のために一番を目指してほしい。
…それにね。
「降旗君は、もう一番でしょ?」
「え…?」
「降旗君はね、もう、私の中で一番大切な人なんだよ。」
そう言って私は、彼を強く抱きしめ返した。
*一番*
私の一番大切な人も、
私を誰よりも想ってくれるのも、
君しかいないから。