第6章 *内緒ルーム*〜花宮真〜
香奈side
「ねぇねぇ、花宮、これどう?」
試着室のカーテンを開け、ワンピースを着て、花宮に見てもらう。
というか、他の場所行ってていいって行ったのに、何で花宮は待っててくれたんだろう。
まぁ、嬉しいんだけどね!
もしこれが花宮の好みにあってたら、バスケ部の皆で出かける時にでも着て行こう。
だって、出来るだけ好みに近づきたいっしょ?
「あー、いいんじゃねーの?それ着て出かけて、ひたすら黙ってれば。」
「ええっ!あたしの性格がダメって事⁉」
今のが見た目としては似合ってるという褒め言葉だったとか、そういう可能性もあるけど、それ以上に落ち込む。
「…まぁいいや。そろそろお腹空いたし、ご飯でも食べに行こ!」
「…結局買わないのかよ。」
「まぁねー。いいのはなかったし。」
なんて、本当は花宮の反応がよくなかっただけだけど。
「…ってる。」
「へ?」
いまいち聞き取れなくて、聞き返す。
そしたら、花宮に肩を押されて…
「わっ!ちょ、花宮⁉」
「うるさい。」
あたしを一言で黙らせた花宮は、あたしを試着室に押し込んだ後、自分もその部屋へと入り、カーテンを閉めた。
「一度しか言わねーから。」
「は、ハイ…。」
そっと耳元に顔を寄せられて、髪が耳に触れる。
変な感じ。
視界に花宮はいないのに、すぐ近くにいるのを、花宮の息で感じる。
「…似合うから、俺以外のやつに見せるな。」
「っ!!」
そんな不慣れそうに、でも優しく囁かれたら、逆らえない。
誰にも気付かれないように、声を出さずに、こく、と小さく頷いた。
*内緒ルーム*
誰にも聞こえない。
誰にも見えない。
二人だけの、内緒ルーム。