第24章 *Happy Birthday 9/11*〜小金井慎二〜
脈はすごく速く打ってて、それに合わせるように落ち着かない気持ちが募っていく。
肩で息をして、滲んできた汗も拭かないまま、ただただ走っていた。
「だからっ…遅いんだ、ってば!」
もうすぐで、今日が終わってしまう。
その前に、何とか言いたい。
それくらいなら、私にも言えるから。
学校の方へと走って行くうちに、小金井の姿が見えた。
私だとわかると、驚いた表情をする。
「なっ…え!?香奈!?」
慌ててる声が、だんだん近くなる。
小金井に近づくに連れて、少しずつスピードを緩める。
最後に抱きついた時には、完全に小金井にもたれかかる状態だった。
「お、そい…!」
「ご、ごめん…。でも、そんなに時間かからな…」
「そういうことじゃないの!」
もう時間がない。
あと数十秒。
息を整える。
あと十数秒。
ゆっくりと深呼吸をする。
あと…あと、数秒。
勇気を出して…
「…誕生日、おめでとう。」
精一杯背伸びして、おめでとうとキスを贈った。
「…っ!」
ぽかんとしてた小金井は、ワンテンポ遅れて真っ赤になっていた。
なんとか届いたみたいだ。
「だから、遅いって言ったでしょ…。」
「あ…ありが、と…。」
いつもと違って、慌てて余裕のない小金井。
そんな小金井を見て、思った。
今まで正直になるのが恥ずかしかったけど、小金井のこういう顔見れるなら、悪くないかも。
「夜ご飯とショートケーキ、作ってあるから。後は歩いて帰ってもいいわ。」
「ショートケーキ!?」
「…やたら復活速いわね」
さっきまでの照れ顔なんてなかったみたいに、ふにゃ〜っとした笑顔を見せる小金井。
普段からこういう顔だから、さっきの照れ顔は新鮮だったのかもしれない。
せっかくだからと、私は小金井に声をかけた。
「…あ、それと。」
「ん?何?」
ショートケーキー!ひゃっほーい!とかバカやってた小金井が振り返る。
その頬にキスを落として、私は言った。
「慎二…好き。」
たまにはこういうのも、いいでしょ?
*Happy Birthday 9/11*
今日くらいは、
いつもは言えない言葉を、
あげてもいいわ。