第3章 お前も一緒に来るか?
國神は手に取っていたスポーツ用品を戸棚に戻し、チームメイトに堂々と言う。
「確かに逸崎はサッカー上手ぇし、それで仲良くなったってのはあるが、アイツは、ミステリアスとかただ単に物静かってわけじゃないだろ。そーいうのは、周りの奴が表面的に見ただけで、実際中身を見たわけじゃねえっつーか」
話してみると面白いし、どこかマイペースだけど、ちゃんと詫びもお礼も言えて意外と律儀だ。
むしろ謙虚さを超えて、
『私の技術は、弱い力を誤魔化すためのテクニックに過ぎないから』
『私はサッカーには向かない』
『女子がサッカーやってたって、側から聞けばあまり良い印象じゃないし……』
卑屈なところもあるが……
(サッカーに関してはいつも自信が無えことばかり言って、自信に満ちた昨日のプレーと矛盾してるみたいな…)
國神が昨日からモヤモヤしていたのは、それ"も"あった。
だから何か彼女を放っておけない。
「とにかくアイツは、周りが物珍しがるような奴じゃねえ、普通の奴だよ…」
「……ふーん。なんか、お前らしくねえな」
「?」
チームメイトは物珍しいそうな眼差しで國神を見上げる。
「お前っていい奴だからさ。困ってる奴いたら、男女分け隔てなく、
・・・・・
誰だろうと助けるだろ?でも、そうやって誰かに深入りして語るなんて、珍しいっつーか」
「………そうか?」
國神は片手で自分の首に触れて目を逸らして、分からないようなフリをする。
チームメイトは、
・・・・・・・・
その様子を察して、ニヤリと笑う。
「ま、それもお前も言う通り、ただ俺が抱いているイメージかもしんねえが……だったら、その中身を知るためにもアシストしてくれよぉ」
チームメイトは自分の携帯を取り出して言う。
「俺、実は逸崎さんのこと、結構気になっていてさあ」
「!」
「詳しく紹介してくれよ。それかLINE交換したいんだけど、國神持ってんだろ?」
気になる女子とお近づきになりたいテンションで國神に交渉するが、國神は携帯をしまっているポケットを抑える。
「……そういうのは他人任せじゃなくて自分で聞け」
國神はらしくなく、親切にしなかった。
逸崎が他の男と連絡すると考えると、何故かモヤモヤする。
そんな自分のエゴを優先させたからだった。