第1章 ヒーローみたいですね
國神錬介。15歳。
好きな食べ物は、わかめスープ。
好きな選手は、ディディエ・ドログバとオリヴィエ・ジルー。
好きなスポーツは、サッカー。
彼は自分の好みや信念、性格全てを含め、シンプルで真っ直ぐでいた。
家族に姉や妹がいるおかげか、乙女心も多少なりとも分かり、気遣いができて、周りからは"いい奴"という印象を持たれていた。
幼い頃、大人しい内面に反した体格の良さが原因で、周りに目をつけられることがあった。
その際、姉が庇ってくれたが、危害を加えられたことで、國神の内の良心が暴走という嵐を起こした。
そして一時期休学に追いやられたが、その間も、TVでサッカー試合を見ていた。
青い芝生の上を駆け巡って戦う選手達を、画面越しで見て焦がれていたことを、よく覚えていた。
自分のフィジカルは、いじめられるための物では決してない。
それは個性であり、自分が自分であり続けるための証であり強さであり武器なのだ。
國神はそれをサッカーという手段で証明するために、名門正堂学院高校へ入学した。
自分の信じる強さの為に。
「……」
國神は日曜日に、自分の部屋でONE PIECEの漫画を読んでいた。
自分のベッドの上で、体育座りに近い正しい姿勢をしていた。
サッカーの練習も試合も好きな人でも、たまの休日には漫画も読むのは、男子高校生らしくもある。
しかし、じっと動かないでいると、体がムズムズしてくるのは、スポーツ選手特有かもしれない。
キリのいいところで漫画を読み止めて、窓の外を確認する。
天気は曇り。だが、雨は降らなさそうだ。
「……行くか」
國神は家にいる家族に「ちょっと行ってくる」と一声かけて、サッカーボール片手に外へ出た。
季節は秋めいてきて、少し肌寒い風が頬を撫でるが、運動するにはちょうど良い。
練習を終えた後の達成感と共に体が温まる感覚も好きだ。
向かうのは、河川敷のすぐそばにある行きつけの広いグラウンドだ。
國神が住んでいる街の公営施設であるそこは、野球をする小さな子供やラジオ体操をするお年寄りなど、老若男女用途問わず、色んな人達が使う。
サッカー試合するには、町役場に事前予約の書類を提出しなければいけないが、1人で自主練する分には大丈夫だ。
しかし、そこで思いがけない出会いがあった。